2009年10月16日金曜日

慣性モーメント (Wikipedia)

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慣性モーメント


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慣性モーメント(Moment of inertia)あるいは慣性能率とは、物体の回転のしにくさをあらわす量である。もっと正確に言えば回転運動の変化(回りだす、止まる)のしにくさをあらわす。質量モーメントとしてあらわされる。

重さの無視できる棒の両端に、質量mMの物体がくっついたものを考える。棒の適当な位置に回転の中心となる点を定め、そこから両端までの腕の長さをそれぞれaAとする。このとき、中心に対する慣性モーメントIは、

I = ma2 + MA2

と、計算される。この定義から明らかなように、慣性モーメントは、中心(中心軸)のとり方によってその値が変わる。中心として系の重心をとったとき、慣性モーメントは最小となる。すなわちもっとも回しやすい。

一般にN個の質点からなる系の慣性モーメントは、


I = \sum_i m_i r_i^2

と定義される。miはi番目の質点の質量、riは中心軸からの距離である。

対象が連続体であるときの慣性モーメントの定義は、


I = \int r^2 dm = \int \rho r^2 dV


となる。rは中心軸からの距離、dmは微小質量、ρは密度分布である。

剛体の角運動量 \boldsymbol L と角速度 \boldsymbol\omega の関係は


\boldsymbol L = I \boldsymbol\omega


と記述できる。角速度ベクトルと角運動量ベクトルが平行の場合は I はスカラーとなるが、一般の場合はテンソルとなり、慣性テンソルと呼ぶ。 すなわち、


\begin{pmatrix}L_x\\L_y\\L_z\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}I_{xx}&-I_{xy}&-I_{xz} \\ -I_{yx}&I_{yy}&-I_{yz} \\ -I_{zx}&-I_{zy}&I_{zz}\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\omega_x\\ \omega_y \\ \omega_z\end{pmatrix}


ここで、


I_{xx} = I_x = \int (y^2+z^2)\rho dV,\quad I_{yy} = I_y = \int (x^2+z^2)\rho dV,\quad I_{zz} = I_z = \int (x^2+y^2)\rho dV




I_{xy} = I_{yx} = \int xy\rho dV,\quad I_{xz} = I_{zx} = \int zx\rho dV,\quad I_{yz} = I_{zy} = \int  yz\rho dV

IxIyIz を(それぞれ x、 y、 z軸に関する)慣性モーメント、 IxyIyzIzx慣性乗積という。

ここで、慣性テンソル行列は実対称行列なので、適当な直交座標系 \{ e_1,\, e_2,\, e_3 \} をえらぶことで対角化(すなわち Ixy = Iyz = Izx = 0)することができ、そのときの座標軸を慣性主軸、 慣性モーメント \{ I_1,\, I_2,\, I_3 \} のことを主慣性モーメントと呼ぶ。慣性主軸座標系では角運動量は


\begin{pmatrix}L_1\\L_2\\L_3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}I_1&0&0\\0&I_2&0\\0&0&I_3\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\omega_1\\ \omega_2\\ \omega_3\end{pmatrix}


と単純に表すことができる。

工学での応用として、回転軸に慣性モーメントの大きい回転体を取り付けた装置をフライホイール(はずみ車)という。これは、回転数の急激な変化を抑止したり、回転によるエネルギーを保存する目的で使用される。

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